図書・図書館史レポート(2021-2022) 司書関係(11)

近畿大学通信教育部図書館司書コースで学んだことを忘れないようにレポートを整理しています。
内容…お恥ずかしい限りですが、よろしければご覧下さい。
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番外.レポート作成のヒント 

設題

日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代、中世、近世、近代以降)の図書館発展の特徴をコンパクトに要約し、かつ私見(400字程度のまとめ)を述べてください。

解答

古代
古代から近世、多数の図書館は権力者により形成され彼らの権威を示すものであった。またかれらの侵攻により図書も集合離散を繰り返した。
世界最古のニネヴェの王室図書館には粘土板に楔形文字で書かれた図書が収蔵され、古代、中世を通し世界最大規模であったアレクサンドリア図書館ではパピルスの巻子本を収蔵していた。これらの施設では粘土板にタグを付ける、総合目録(ピケナス)の作成など今日の図書館サービスに類することも行われていた。
又ベルガモンの図書館は羊皮紙を書写材料とした。羊皮紙は冊子体で両面に記せる、丈夫である等の特長があったためその後、紙の出現まで図書の主要な媒体となった。
古代ローマは度重なる遠征により各地域の図書を収め権力者が図書館を設立した。本の素材はパピルスである。そして従来、学者等に限定公開されていた図書を一般にも公開した。しかしその後、帝国の東西分裂、476年の西ローマ帝国滅亡とともに古代図書館の歴史は終焉を迎える。

中世
中世初期は複雑な国家の興亡が相次ぐが、キリスト教、封建制度の浸透により国家の基礎が固められてくる。この間はキリスト教教会・修道院が古典やこの時代の学芸を図書に記し後世に伝える役割を果たした。
同時期に存在した東ローマ帝国はラテン語、ギリシャ語の図書を広く集め図書館を建設する等するが、1453年イスラム教系のオスマン帝国の侵攻により滅亡する。
オスマン帝国には中国(唐)との戦い(751年)の結果、製紙法と印刷技術が伝わる。また同国では数学、天文学、哲学、医学等が高度に発達しそれらの図書が編まれた。これらは交易、レコンキスタ等を通し西洋へと伝わっていく。
中世後期にはキリスト教教会・修道院が元となり各地に大学が成立、教科書や講義録を記す小型本が生まれる。しかし図書は未だ羊皮紙であり希少なものであり、大学に図書館が併設されるまで時間を要した。また併設された図書館の本の多くは鎖につながれ、書見台で閲覧するという形であった。

近世
ドイツの金属加工職人であったグーテンベルクは1440年前後、従来の印刷技術を改良し、より実用的な活版印刷術を発明した。そこに西洋への紙の伝播があり、これらが近世への幕開けを促す。図書が大量かつ安価に生産され、多くの人々の手へ渡るようになった。これにより教育が普及していく。図書館も本が書架に並べられ公開へと近付く。更に貸出も容易になり近代図書館へと近付いていく。
マルチン・ルターによる宗教改革(1571~)は、ドイツ語聖書や彼の論文等が刊本により急激に広がった事でその勢いを増した。又中世を代表する修道院の図書館はその影響により多くが破壊、略奪された。他方でそれらの図書の再編、新教の普及を目指した大衆向けの教会図書館が出現した。

近代以降
西洋諸国では公共図書館の前身ともいえる様々な形態の図書館が誕生していく。又その国の最大規模の図書館により納本制度も始まる。
フランスではフランス革命(1789年)後は教会・修道院、貴族の図書館の本が国家に没収、再編され、国立図書館、各市立図書館等が整備された。又、同国のガブリエル・ノーデは図書館学に関する書物を最初に出した。
イギリスでは教区図書館や労働者のための職工図書館、更に会員制図書館が登場した。そして、これらを公費で運営すべきという論調が生まれ、1850年に世界で初めて公共図書館法が制定された。
又当初イギリスの植民地であったアメリカでも同様に、ソーシャル・ライブラリーと呼ばれる会員制図書館、機械工図書館等が生まれる。その後ボストンで公共図書館が恒久的な法整備が為され整備される。そしてアメリカ建国100周年にあたる1876年は、図書館専門雑誌(Journal Library)の創刊、デューイによる十進分類表の発表等があり図書館界にとってエポックメイキングな年となった。
そして情報化社会の今日、図書館は図書の電子化、国際的な図書館間の協力が進められるようになった。

考察
古代の図書館は、古代ローマの一時期を除き権力者(その有能さは強調されているが)の力の誇示、情報を限られた層で独占するための施設だったと言える。中世に入るとそれに加え、宗教の下に彼らの研鑽(布教の一助として)という形での図書館が現れたと言えよう。ここまで限られた層の利用に留まったのはやはり紙の普及以前で図書の希少性が高かった事もその大きな要因であったと考えられる。実際、近世の活版印刷術の登場により、当初は新教の普及が主であったが次第に図書の内容も、図書館の利用可能層も多岐に渡るようになった。近代以降はそこに産業発達による民衆の地位向上も加味され、図書館がより身近なものになってくる。
今日、図書館はあって当然のインフラの一つとなっているが、それは歴史の数多の要素が複雑に絡んだ結果得られた貴重なものだと私は感じた。その図書館に関われる幸運をかみしめ今後も研鑽を積んでいきたい。

文字数 2042文字

添付

参考文献

千錫烈編 2014.『図書館・図書館史』学文社

講評
提出お疲れ様です。
設題のポイントをしっかり押さえ、西洋の図書館史を大変分かりやすくまとめられています。特に初期の図書館が限られた特権階級のためのものから、現代の誰でも自由に使えるものに変化してきたことを理解している内容であり秀逸でした。グーテンベルクの活版印刷技術の与えた影響が社会を変えたことをしっかり理解していて好印象です。欲を言うと現代の内容により言及して欲しかったです。私見は納得できる内容でした。
引き続き頑張ってください。
総評: 合格

振り返って
試験の過去問の傾向を見ていると、日本の図書館史の問題が多い為、日本の図書・図書館史をまとめた方が…というおすすめもありましたが、逆張りして…、というか、知らないことの多かった西洋の図書・図書館史を選びました。ちなみに私が受けた試験の際は、西洋の図書・図書館史の問題が出たので幸運でした。なので試験対策から言えば、日本、西洋両方のレポートを作成しておいた方が良いのでは、と私は思いました。
しかし、図書館の司書の資格を取るのに、その歴史を学ぶ、そしてその歴史は千年以上…、という奥深さに恐れ入った科目でした。
こうしてレポートを書いたことを振り返って思うのは、司書資格をとる際のカリキュラムが非常に良く体系的になっているということです。無論、情報化社会の今日、それを追っかけていかなけりゃいけませんので、そのテキストが時代遅れになってしまうこともありますが、それを差し引いても良くできているなと私は感じました(これは教職の免許とるためのカリキュラムと比較してのことですが)。
図書館業界、司書の奥深さですね。
しかし、今、図書館業界、司書の世界は受難の時代と言えるのではないでしょうか。指定管理者制度の導入は多くの図書館の継続的な運営を困難にしています。行政サービスの一環として、黒字、赤字というところにとらわれずに、長い目で運営をしていく、そもそも、図書館の効用というものを計るものさしというのは、採算性や利用者数といったものだけではなく複合的かつ場合によっては、効率面で見ればマイナスに見える運営というのも必要だと私は思います。またそこに携わる司書の方々も、プロとして生活できるだけの待遇が必要とされると私は思います。
研究職にも近い司書の専門性を鑑みれば、自分の生活の一部として、自身の専門性を深めるといったことも当然想定されます。
それには、生活のできる報酬というのは最低限保障されるべきで、そこから専門性を深めるための報酬も出されて然るべきだと私は考えます。
ですが、今は時給制、或いは年季奉公(会計年度任用職員)での採用が多くを占め、その待遇は極めて不安定なものです。
今はよく、保育士、保育所などの子育てに関わる職域の待遇の酷さが取り上げられていますが、図書館、博物館と言った社会教育の界隈は、やっぱり同じくらい、或いはその効用が漢方薬のようにじんわりと効いて来るものであるが故、取り上げられることが少ないような気が私はします。
ひょっとすると、これから将来の図書・図書館史のテキストでは、この今の時代は受難の時代として取り上げられるのかな、そう思う今日この頃です。

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